AI時代のDX知識

【第4回】内製化が進んでも、ITベンダーの価値が失われない理由 — 役割が“置き換わる”だけの未来へ —

Ryosuke Ishii

AIの登場によって、企業がシステムを作る構造は少しずつ変わり始めています。部門単位の小さなシステムであれば、非エンジニアでもAIを活用しながら自分たちで作れるようになってきました。ただ、その変化は「ITベンダーの価値がなくなる」という意味ではありません。むしろ、役割が置き換わることで、これから新しい価値が生まれていきます。

内製化が広がる時代でも、ITベンダーが必要な理由

AIが実装を手伝ってくれるようになり、「外部ベンダーが不要になるのでは」と感じる人も増えてきました。ですが、企業のITは部門システムだけで成り立っているわけではありません。基幹システム、横断的なデータ連携、セキュリティ、認証基盤など、大規模で複雑な領域は依然として高度な設計が必要です。

つまり、内製化できる部分は広がっても、すべてを自社だけで完結できる未来にはなりません。ベンダーの経験値が必要な領域は確実に残り続けます。

ITベンダーの価値は「実装」から「設計・伴走」へ変わる

これからは、ITベンダーの価値として最も重要になるのが、要件定義や構造設計といった上流の判断です。AIがコードを書けるようになるほど、逆に「何を作るべきか」「どう設計すべきか」の判断力が重要になります。

そのため、ベンダーの役割は次第に「手を動かす請負」から「設計と伴走」へと移っていきます。実装そのものよりも、ビジネスを理解しながら正しい構造を描けるかどうか。そこに価値の中心が移動していきます。

ベンダーと事業会社の境界が溶けていく未来

欧米ではすでに、エンジニアが事業会社側に所属するモデルが一般的です。日本でも、同じ流れが静かに進みつつあります。ベンダー出身者が事業会社に移り、DXの中心人物として活躍する場面が増えてきました。

この動きが示すのは、「どこに所属しているか」よりも「どんな視点を持っているか」が重要になるということです。事業会社はビジネス理解に長け、ベンダーは技術経験に強い。その2つが交差することで、企業全体のIT力が底上げされていきます。

共創パートナーとしての新しい関係性

内製化が進むと、ベンダーと事業会社の関係は「発注・受注」の一方向ではなくなります。両者が得意領域を持ち寄りながらプロジェクトを進める、「共創」の形が一般的になっていきます。

たとえば、こんな分担が自然に生まれてきます:

  • 事業会社: 要件整理、運用、改善、一部実装
  • ITベンダー: 複雑な構造設計、セキュリティ、基盤構築、高度な実装

内製化が広がるほど、ベンダーは「小回りの効く専門家」としての価値がより鮮明になります。技術が民主化される時代だからこそ、外部パートナーの役割は“薄くなる”のではなく、“高度化”していきます。

まとめ:AI時代に必要なのは“抽象化能力”という共通スキル

AIによって実装が簡単になっていくほど、事業会社にもベンダーにも共通して必要となるのは「抽象化能力」です。課題を構造的に整理し、どこを変えれば業務が良くなるのかを考える力。これこそが、次の時代のDXを支える土台になります。

内製化はベンダーの仕事を奪うものではありません。役割が変わり、関係が変わり、ITとビジネスの距離が縮まっていく。その変化そのものが、AI時代のDXに必要な知識だといえます。

ABOUT ME
石井 亮介(りょうさん)
石井 亮介(りょうさん)
データパレード 代表取締役
㈱データパレードの代表取締役で高田馬場の町中華のChief Data Officerをしています。 BIツールのセールスエンジニア・システムエンジニア・カスタマーサクセス歴15年、大学データサイエンス科 講師をしています。データエンジニア領域とコンサルティングが得意です。
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