毎月末、AIから質問が6問届きます ― 自分の考えは、聞かれないと言葉にならない
毎月末の朝9時に、AIから質問が6問届きます。聞かれるのは、私自身の考えについてです。答えると記録が更新され、翌月にはその記録を踏まえた新しい6問が届く。これを7回続けて、手元の記録は約3.1万字・47章になりました。
もともとは、AIと一緒に仕事をするために、自分のことをAIに知っておいてもらう目的で始めました。それが続けているうちに、自分の考えを整理する時間に変わってきています。
先月末(2026年7月31日)に7回目が終わったところです。この記事では、なぜ始めたのか、どういう仕組みなのか、続けてみて何が分かったのかを書きます。
実際のやり取り ― AIに「それ、前回のご発言と違います」と止められた場面 ― は、体験談として別にまとめています 👉 https://x.com/RyosanBIMania/status/2083404888537731199

きっかけは、AIに自分を知ってもらうためでした
始めた理由は、記録を残したかったからではありません。AIと一緒に仕事をするうえで、自分がどういう人間かをAIに知っておいてほしかったからです。
AIに仕事を任せるようになって、最初に引っかかったのがここでした。指示は通ります。作業もこなします。ただ、出てくるものが「自分ならこうはしない」という形になる。そのたびに前提を説明し直して、直してもらう。この往復が毎回発生していました。
原因は、AIの性能ではありませんでした。こちらが何を大事にしていて、迷ったときに何を選ぶ人間なのかを、AIが知らないだけです。人間の相手なら、何度か一緒に仕事をするうちに自然に伝わっていく部分です。それが、毎回ゼロから始まっている状態でした。
それなら、先に渡しておけばいい。そう考えて、自分の考えをインタビューしてもらい、記録として残すことにしました。AIに読んでもらうための資料のつもりでした。
変わってきたのは、続けているうちです。答えている自分のほうが、整理されていく。
自分の考えというのは、頭の中にある間は形がありません。「だいたいこういう方針でやっている」くらいの状態で、それでも日々の判断はできてしまう。困っていないので、わざわざ言葉にしません。そこに質問が来ると、答えるために一度形にする必要が出てきます。言葉にした瞬間に、初めて自分でも「そういうことだったのか」と分かる、ということが何度も起きました。
いま、目的は2つあります。AIに自分を知っておいてもらうこと。そして、自分の考えを整理すること。後者のほうが、だんだん大きくなってきています。

仕組みは、思っているより単純です
月末になるとプログラムが起動します。やることは3つだけです。
1. これまでの記録を全部読む
過去6回ぶんのやり取りが1つのファイルにまとまっているので、それをそのまま読み込みます。
2. 次に聞くべき質問を6問つくる
新しい話題だけを聞くのではありません。すでに一度答えた話題について「考えが変わっていないか」を確認する質問を必ず混ぜる、という条件を付けています。
3. 声をかける
できた質問はSlackに届きます。あとは私の都合のいいときに答えるだけです。
使っているのは安価なモデルなので、1回あたりの費用は数円です。仕組みとしては、この程度のものです。
効いているのは、質問そのものではありませんでした
届く質問は、こういう形をしています。
【矛盾チェック】5回目では「仕組みは、今ある技術で確実に解けるかで決める」と掲げていましたが、6回目では「気が合う相手であること」を確実性より優先しています。この二つが両立する条件は何ですか。
効いているのは、後半の質問文よりも、頭に付いている【矛盾チェック】の一行のほうです。半年前の自分の発言を並べられると、そのときの言葉をなぞって答えるわけにいかなくなります。
人に同じことを聞かれても、こうはなりません。相手はこちらの半年前の発言を覚えていないからです。覚えているのは自分だけで、その自分は「前もそう言った気がする」くらいの精度でしか覚えていない。記録を全部読んだうえで質問してくる相手というのは、これまで存在しませんでした。

ルールは3つだけ決めています
- 追加だけでなく、既存の考えの更新もする
新しい話題を足すだけだと、記録は増えても古い部分が古いまま残ります。 - 前と違うことを言うのは、正しい
考えが変わるのは成長や変化であって、間違いではありません。古いほうに合わせません。新しいほうを正とします。 - ただし、違ったときはその場で知らせる
黙って書き換えません。「これは前回の◯◯というご発言と変わっています。新しいほうで更新してよいですか」と、対話の途中で止めてもらいます。
3つ目が肝です。1と2だけだと、記録はいつのまにか静かに書き換わっていきます。変わったこと自体は良いのですが、変わったことに気づかないまま進むのは別の話です。止めてもらえば、そこで一度考え直せます。
7回目では、この停止が2件かかりました。確認してみると、2件とも考えが変わったわけではありませんでした。前回の記録の書き方が足りず、読み返すと違う意味に取れる状態になっていた。直したのは考えではなく、記録のほうでした。
聞かれて初めて、言葉になったこと
以前、「自分は仕事人間だから、仕事を完全には切り離せない」と答えたことがありました。7回目で、その根拠を問われました。それは性格なのか、これから変わりうるものなのか、と。
出てきた答えは、こうでした。
働くのが好きな性格なのではなく、仕事を極力自分の趣味に近づける努力をした結果です。
自分でも、聞かれるまで言葉にしていませんでした。「仕事人間」というラベルを自分に貼って、それで説明した気になっていたわけです。中身を問われると、そのラベルは「努力の結果としてそうなった状態」の要約でしかなかった。ここまで分解できると、その次の話にも進めます。仕事には「やりたい仕事」と「やらないといけない仕事」があり、後者を消していけばよい、という形に整理できました。
同じことが、AIとの分担についても起きました。どこまで渡せてどこから渡せないのか、と聞かれて出てきた線引きはこれです。
作るところまでは渡せます。ただし、集めた情報と作った成果を自分が全部理解したうえでお客様と話し、調整する。そこを手放したら、それはもう自分の仕事ではありません。
そして、成果は数倍になっている一方で、自分の実作業量はほとんど変わっていない。これも、質問されて初めて数字の形で出てきたものでした。日々やっていることなので、聞かれなければ「AIで効率化しています」の一言で終わっていたと思います。

言い直しは、消さずに両方残します
1回のインタビューの中で、前の質問への答えを自分で撤回した場面もありました。
記録には、こう書いてあります。
※セッション内で一度「得られていない」と回答後、本人が言い直し。後の回答を正として記録
上書きして消してもよさそうなものですが、残しています。最初に反射で出た答えと、考え直したあとの答えが違ったという事実そのものが、次に同じ論点を聞かれたときの手がかりになるからです。とっさに出るほうが本音だとは限りませんし、考え直したほうが正しいとも限りません。両方あるから、次に読み返したときに判断できます。
これは、会社の仕事にもそのまま使えます
自分の考えを聞かれて答える、という話をしてきましたが、同じ形は業務の判断基準にそのまま当てはまります。
なぜその案件を受けたのか。なぜあの相手と組むのか。どういう条件なら断るのか。こうした判断は、たいてい本人の頭の中だけにあります。そして本人は、説明を求められない限り言葉にしません。困っていないからです。
引き継ぎ資料が形式的になりがちなのも、同じ理由だと思っています。手順は書けますが、判断は書けない。書けないのではなく、聞かれていないから言葉になっていない。
必要なものは3つだけです。
- 過去の記録が、1か所にあること
- それを全部読んだうえで質問をつくる側がいること
- 前と食い違ったら、その場で指摘すること
3つ目がないと、記録は最新の発言で静かに塗り替えられていきます。どこが変わったのかが分からない記録は、読み返しても使えません。

任せて分かったこと
AIがやっているのは、過去の記録を全部読むことと、食い違いを見つけて止めることの2つだけです。考えるのは私で、答えを持っているのも私しかいません。
それでも、この2つを任せられるかどうかで、出てくる言葉がまるで違いました。人間の相手には、半年前の自分の発言を1行添えて質問することができません。逆に言えば、言語化が進まないのは考えが足りないからではなく、そう聞いてくれる相手がいなかっただけなのだと思います。
データも人もAIも、つながるから、先がある。御社の「なぜこう決めているのか」は、誰かに聞かれたとき、言葉になりますか。
参考
- 実際にAIから「それ、前回と違います」と止められた場面は、体験談としてまとめています 👉 https://x.com/RyosanBIMania/status/2083404888537731199
- AIにどこまで日々の仕事を任せているかは、別の記事にまとめています 👉 https://data-parade.com/log-analysis-with-ai/

