Claude Dashboardsを自社Snowflakeで18回試した実力と落とし穴

Claude Dashboardsを自社Snowflakeで18回試した実力と落とし穴
Ryosuke Ishii

「ダッシュボード作って」の1文で、5分。2026年10月8日、Anthropic が Claude に「Dashboards」を出しました(発表)。チャットで頼むと、グラフと数字と表が並んだダッシュボードを作ってくれる機能です。いまはベータ版です。

一番飯店の Instagram の実績が入った自社の Snowflake につないで、同じ頼み方を何度も繰り返し、出てきた数字を1つずつ確かめました。作ったダッシュボードは18個です。

先に結論:できること、気をつけること

できること

頼むのは1文だけ

  • 「月ごとのリーチと保存数、フォロワーの推移、上位10投稿がわかるダッシュボードを作って」と頼むと、数字の並び・棒グラフ・折れ線・ランキング表がそろった盤が5〜9分で出てくる
  • Claude が自分で表を棚卸しし、件数と期間を数え、SQL を書いてから作る。人がするのは、SQL を流す前の許可を押すことだけ
1文で頼むと、チャットの横にダッシュボードが出る(数字はぼかしています)
1文で頼むと、チャットの横にダッシュボードが出る(数字はぼかしています)

データの癖を自分で見抜く

  • 取得のたびに累計が積み重なる表でも、投稿ごとに1行に絞ってから足す。15回試して、二重に数えたことは一度もなかった
  • 時差の情報が無い日時の列を、「こんばんは」の投稿が夜に集まることから日本時間だと見抜き、根拠を画面に書く
  • 取り込みが止まっているデータには、作る前に「8月12日で止まっている」と断ってから期間を決める
時差の情報が無い列を、投稿本文の「こんばんは」の時間帯から日本時間だと判断した説明
時差の情報が無い列を、投稿本文の「こんばんは」の時間帯から日本時間だと判断した説明
「直近3か月」と頼まれて、作る前に取り込みの停止を知らせた
「直近3か月」と頼まれて、作る前に取り込みの停止を知らせた

定義や目標も盤に入れてくる

  • 指標の定義をまとめた器(セマンティックビュー)があれば、見つけて使う。月次レポートと数字がそろう
  • 方針書の目標を破線で引いたり、「達成/改善中」の判定を表示したりする
  • 期間の切り替え、対象月の選択、ベスト投稿の印といった操作部品も、頼まなくても付けてくる
方針書の短期目標を破線で引いた月別リーチ(数字はぼかしています)
方針書の短期目標を破線で引いた月別リーチ(数字はぼかしています)

数字の裏まで確かめられる

  • 画面の「Sources」で、どの数字がどの SQL から出たかを見られる。SQL にはコピーと編集のボタンが付いている
  • 開くたび、更新ボタンを押すたびに、Snowflake から最新の数字を取り直す
Sources で「月別リーチ・保存数」を開いたところ。SQL と、コピー・編集のボタンが出る
Sources で「月別リーチ・保存数」を開いたところ。SQL と、コピー・編集のボタンが出る

直すのも1文

  • 「開き直すと数字が出ない。直して」と頼むと、1往復で原因を見つけて直した
「開き直すと数字が出ない。直して」と頼むと、原因を見つけて直した
「開き直すと数字が出ない。直して」と頼むと、原因を見つけて直した

共有と持ち出し

  • 招待した人だけに見せるか、リンクを知っている全員に見せるかを選べる
  • Hex・Sigma・Grafana Cloud など、他の分析ツールへ送るボタンがある
エクスポートの送り先(2026年10月10日の画面)
エクスポートの送り先(2026年10月10日の画面)

守り方も作れる

  • Snowflake 側で見せる表だけを読める役割を作れば、それ以外の表は Claude から存在すら見えない

気をつけること

  • 計算の誤りは無いが、「何をどう数えるか」は回ごとに揺れる。同じ頼み方でも、月次レポートと合う回と合わない回があった
  • 作った直後は動いても、開き直すと数字が全部消える盤があった
  • 決まった時刻の自動更新や、しきい値で知らせる設定は、画面に見当たらない

以下、画面と Snowflake の実行記録で確かめた範囲で書きます。


何が出たのか

公式ヘルプに書いてあることを先に並べます。

項目公式の記載
使えるプランPro / Max / Team / Enterprise(Enterprise は管理者が有効にする)
つなげるデータAmazon Redshift / BigQuery / ClickHouse / Databricks / Snowflake と、接続済みのアプリ
作り方チャットで頼む。または Artifacts の「Dashboard」から始める
数字の裏1つのグラフに1本のクエリ。クエリと最終更新時刻が見える

出典: Get started with Claude Dashboards

以下は2026年10月10日〜11日に画面で見たものです。ベータなので、仕様は変わる前提で読んでください。

Artifacts の「Make something new」に並ぶ Dashboard(Beta)
Artifacts の「Make something new」に並ぶ Dashboard(Beta)

つなぎ方:パソコンの中の接続では、出来た盤が動かない

最初の失敗

最初は、Claude のデスクトップアプリに入れていた Snowflake の接続(パソコンの中で動く接続)で作りました。チャットの中では Claude が数字を取れて、盤もできました。ところが盤を開き直すと、データが全部「読み込めず」になりました。

ダッシュボードは、開いた人の claude.ai のコネクタで、毎回クエリを流し直します。公式ヘルプにも “Each user connects their own apps, even in a shared artifact.” とあります。パソコンの中の接続は、盤からは見えません。

公式のつなぎ方

claude.ai の「コネクタ」に Snowflake を足すには、Snowflake 側に次の3つを用意します。

  1. MCP サーバー(Claude から使う道具の入口)
  2. 接続用の役割と、見せる表だけの読み取り権限
  3. OAuth の連携(claude.ai からログインするための鍵)

加えて、ログインするユーザーの既定の役割と既定の倉庫を決めておきます。Claude はログインした人の既定の役割でしか動けず、既定の倉庫が空だと接続が始まりません。

出典: Snowflake Cortex Agents MCP

今回は、インスタの4つの表とセマンティックビュー(指標の定義をまとめた器)だけを読める役割を作りました。コメントの表と売上の表には権限を渡していません。Claude 側からはその表があること自体が見えません。

入口は「読み取り専用」の設定にしました。わざと Claude にスキーマ(表を入れる場所)を作る命令を流してもらうと、エラーで止まりました。Snowflake 側で何も作られていないことも確かめています。この役割には、全員に付いている権限の流れで学習用の場所にスキーマを作る権限が残っていました。止めたのは役割ではなく、入口の読み取り専用の設定です。

見せない表は役割で、書き込みは入口の設定で止まりました。「読むだけ」を頼む文の縛りに頼らず、Snowflake 側の設定で守れます。 本番のデータにつなぐなら、ここを先に作るのが確かです。


同じ1文で3回作った

頼み方

Snowflake のインスタグラムのデータから、月ごとのリーチと保存数の推移、フォロワー数の推移、リーチの多い投稿の上位10件がわかるダッシュボードを作って。SELECT で読むだけにして、表やビューを作ったり書き換えたりしないで。コメントの表とお店の売上の表は使わないで。

新しいチャットで、メモリをオフにして、この1文だけを送りました。

かかった時間

3回とも、頼んでから完成まで5〜9分でした。その間に人がしたのは、Claude が SQL を流す前の許可確認を押すことだけです。

Claude はいきなりグラフを作りませんでした。毎回、表の一覧を見て、件数と期間を数え、定義を調べてから作っています。Snowflake の道具の呼び出しは1回あたり12〜22回で、すべて読むだけの命令でした。

数字が揃わなかった

1回目2回目3回目
月別の数え方セマンティックビュー各投稿の最新の値で自作「翌月1日時点」を元の表から自作
月次レポートと一致するしないする
期間2025年5月〜2026年7月2025年5月〜2026年8月2025年5月〜2026年7月

このデータは、リーチや保存が取得のたびに累計で積み重なっていく形です。月次レポートでは、各投稿を「投稿した月の翌月1日時点」の値で数える決まりにしています。2回目はこれを知らずに「最新の値」で数えたので、翌月1日より後に伸びた分まで入り、どの月も大きく出ました。2025年5月は月次レポートの2倍近くになっています。

2回目の SQL を流し直すと、盤の数字と一致しました。計算は正しく、数え方の選び方が違ったということです。


データの罠を5つ用意して、3回ずつ試した

このデータには、知らないと数字を間違える癖があります。罠ごとに短い頼み方を作り、3回ずつ試しました。

罠中身結果
累計の二重計上取得のたびの累計値をそのまま足すと何十倍にもなる3/3 正しく扱えた
時差投稿日時は最初から日本時間3/3 変換しなかった
比率の平均保存率は「保存の合計÷リーチの合計」3/3 合計÷合計で出した
データの終わり取り込みが2026年8月12日で止まっている3/3 先に気づいて断った
定義の器セマンティックビューがある2/3 使った

15回とも、計算の誤りはありませんでした。 二重計上も、時差の足し過ぎも、率の平均もしていません。

時差の判断は、データから自分で根拠を取っていました。投稿日時の列には時差の情報がありません。そこで「こんばんは」を含む投稿が17〜21時台に集まっていることから、日本時間で記録されていると判断しています。3回ともその根拠を画面に書いていました。

一方で、選び方は回ごとに違いました。

  • 「直近3か月」の切り方: 6〜8月 / 5月〜8月12日 / 5〜7月
  • 保存率の期間: 2025年5月から / 2023年8月から
  • 数字の時点: 翌月1日 / 最新

どの回も、選んだ定義を画面の説明文に書いていました。ただ、読む人がその説明まで読まないと、違いには気づけません。

器を使わなかった1回

罠5で器を使わなかった1回は、理由を「セマンティックビューの中で何の表を読んでいるか確認できなかった」と書いていました。そのうえで、「自分の集計は他の資料と数字が合わないので注意して」と添えています。

Snowflake の実行記録には、試験用の役割で「対象が無いか、その操作はできない」という失敗が何度か残っていました。命令の本文は伏せ字ですが、セマンティックビューの定義を取り出そうとして、持ち主でない役割では出せなかったものと見られます。器を用意しても、中身が見えない器は使われないことがあります。

作り手の環境で結果が変わる

最初の1回は、私のアカウントに入れてあるスキル(作業手順書)が自動で効いた状態で作っていました。そのスキルにはインスタのデータの知識が入っていて、その回はセマンティックビューにすぐ届いています。シークレットチャットにしてもスキルは効いたままでした。スキルと個人設定を外して、普通の利用者に近い条件で試し直しています。


開き直すと、数字が全部消える盤がある

作った盤のつなぎ先を確かめていくと、調べた12個のうち5個が「Couldn’t load」で、数字が1つも出ませんでした。

原因は、盤に保存されたつなぎ先の名前です。正しい名前は「Snowflake PJ96」(空白)ですが、5個は「Snowflake_PJ96」(下線)で保存されていました。Claude が道具の内部名を書いてしまったものと見ています。作った直後はチャットの中で数字が見えるので、その場では気づけません。

「開き直すと数字が出ない。直して」と1文で頼むと、Claude は1往復で名前の違いを見つけて直しました。開き直すと、今度は数字が出ました。

作ったら、一度閉じて開き直して確かめる。 今のところ、これが要ります。


数字の裏と、取り直し

Sources で SQL が見える

右上のデータのアイコンから「Sources」を開くと、データごとに説明・SQL・結果が並びます。SQL の欄にはコピーと編集のボタンが付いています。Claude の説明では、直した SQL を試して保存することや、結果を CSV で落とすこともできます(今回は試していません)。

(画面は冒頭の「数字の裏まで確かめられる」の図)

開くたびに取り直す

直した盤を開くと、右上に「Updated now」と出ました。更新ボタンを押すと「Refreshing…」になり、10秒ほどで「Updated now」に戻ります。決まった時刻に自動で更新する設定や、しきい値で知らせる設定は、画面に見当たりませんでした。

盤ごとに接続の許可が要る

盤を初めて開くと「このアーティファクトはコネクタを使用します」と出て、「続ける」を押すまでデータを読みに行きません。許可は盤ごとに求められます。説明には「読み取りと変更が可能」とありますが、実際に何ができるかは Snowflake 側の権限で決まります(今回は読むだけ)。

盤を初めて開くときに出る、接続の許可を求める画面
盤を初めて開くときに出る、接続の許可を求める画面

公開はどうなるか

リンク公開は選べた

公式の管理者ガイドには “Artifacts that use connected apps, or that ask Claude questions, can’t use ‘Anyone with the link.'” とあります。

出典: Artifacts admin guide

実際の画面では、毎回取り直す盤でも「リンクを知っている全員(閲覧のみ)」が選べました。選ぶと確認が出ます。

  • リンクを知っている人は、サインインなしでこの盤を閲覧できる
  • Claude にサインインした人は、そのデータも閲覧できる

ログインしない人には、何も出ない

公開した盤を、ログインしていないブラウザで開きました。題名と「読み取り専用」は出ますが、本体は空で、「このアーティファクトのデータを表示するにはサインインしてください」と出るだけです。グラフの枠も数字も出ません。

サインインした別の人に、作り手の接続でデータが見えるのか、その人自身の接続が要るのかは、別のアカウントが無いので確かめていません。確かめた後は、すぐ非公開に戻しています。


他のBIへ移せるか

「共有」の「エクスポート」に送り先が並んでいます。2026年10月10日の画面では9つでした。

  • Amplitude / Grafana Cloud / Hex / Mixpanel / Omni Analytics / Perplexity Computer / PostHog / Sigma
  • monday.com(近日公開)

公式の発表では、Looker・monday.com・Tableau が「近日」とされています(Dashboards and Motion)。ただ同じ日の画面では、「近日公開」と出ていたのは monday.com だけで、Tableau と Looker は一覧そのものにありませんでした。

(送り先の画面は冒頭の「共有と持ち出し」の図)


手作りのBIと比べる

同じ内容(上の数字4つ・棒グラフ2つ・折れ線・上位10件の表)を、MotionBoard や Tableau で手で作る場合と比べました。手作りの側は、BI を15年近く触ってきた経験からの見立てで、今回測ったものではありません。

MotionBoard / Tableau(手作り・経験値)Claude Dashboards(今回の実測)
作るまでの時間約3時間5〜9分
累計値の扱いツールの中の計算で、人が決めるClaude が毎回決める。誤りは無いが、時点と期間は揺れる
定義の使い回しボードのコピー、共有データソース。明細の計算はデータベースに持たせる器があれば多くの回で使う。中身が見えないと使わないことがある
見る人の権限自由に付けられる見る人ごとの接続と、盤ごとの許可が要る
更新時刻指定の自動更新。データベースを常に見る形が主開いたとき・更新ボタンで取り直す。時刻指定の設定は画面に見当たらない
しきい値の通知MotionBoard が特に強い(設定と通知方法の用意が要る)設定は画面に見当たらない。目標線と判定の表示まで

置き換えではなく、聞いて確かめる側

時間は大きく縮みます。代わりに、数え方を決める役目が人から Claude に移ります。毎朝同じ数字を大勢に配る使い方は、定義を固めた手作りのBIの方が向いています。数え方が回ごとに揺れても困らない場面、つまり「この数字、月ごとに並べるとどうなる?」を聞いてその場で形にし、裏の SQL まで確かめる使い方には、今の Dashboards が合っています。


まとめ

  • 1文の依頼で、5〜9分でダッシュボードが出てくる。手作りのBIで約3時間かかる内容
  • 15回試して、計算の誤りは0。累計の扱い、時差、比率の出し方、データの終わりは自分で見抜いた
  • 揺れたのは「何をどう数えるか」。定義をまとめた器を使った回は、月次レポートと数字がそろった
  • 作った直後は動いても、開き直すと数字が消える盤があった。閉じて開き直して確かめる
  • 見せる表と書き込みは、頼む文ではなく Snowflake 側の役割と入口の設定で守れる
  • 決まった時刻の更新や通知は画面に無い。毎朝配る用途より、聞いてその場で確かめる用途に向いている
ABOUT ME
石井 亮介(りょうさん)
石井 亮介(りょうさん)
データパレード 代表取締役
㈱データパレードの代表取締役で、高田馬場の町中華「一番飯店」のChief Data Officerも務めています。BIツールのセールスエンジニア・システムエンジニア・カスタマーサクセス歴15年。大学のデータサイエンス教育で講師も担当してきました。現在は自社業務のほとんどをAIに移管し、AI10部署と50を超える自動処理が24時間動く「AI経営」を実践中。その実践知をこのブログで発信しています。
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