AI/DX活用

AI社員が「働いて見える」オフィスを作った ― 可視化で見せるべきは、忙しさではなく「止まっていないか」

Ryosuke Ishii

〜 ドット絵のオフィスで、AIメンバーたちが実際のログどおりに動く 〜

AIオフィスのデモ動画

自社では、いくつもの業務をAIに任せています。議事録の整理、レポートの生成と公開、請求まわりの下ごしらえ、チャットの収集。毎日どこかで自動処理が動いています。けれど、ふと思いました。これだけ動いているのに、私はそれを一度も「見て」いない

動いているかどうかは、ログを開けば分かります。でもログは、詰まっているときほど読みたくないものです。そこで、AIメンバーたちが働く様子を、そのまま一枚の画面にしました。ドット絵のオフィスに、AIの司令塔である副社長のアケミ(AI)と各部署が住んでいて、実際の作業ログどおりに歩き、机で作業し、疲れれば休憩室に下がります

実際の作業ログどおりに動くAIオフィス。中央のフロアで各部署が働く
実際の作業ログどおりに動くAIオフィス。中央のフロアで各部署が働く

作り方の詳しい話や、この一枚をどこまでAIに任せて作ってもらったかは、体験談として別にまとめています。

👉 体験談:AI社員のオフィスを、AIに作ってもらった話(X)


なぜ、わざわざ「見えるように」するのか

ログは、正しく動いているときは読まれません。読むのは、たいてい何かが壊れたあとです。つまり普段は誰の目にも触れていない。それでいいのだろうか、と考えました。

人が大勢いる部屋なら、誰が忙しくて、誰が手を止めているかは、見れば分かります。AIにも同じ「見れば分かる」を持たせたい。それが出発点でした。

見た目はあえて2Dのドット絵にしています。立体にすると情報が増えて、かえって状態が読みにくくなる。16ピクセルの小さな人が、机にいるのか休憩室にいるのか、それだけが一目で分かればいいからです。


① まず、「何をしているか」を見せる

キャラをクリックすると、その部署が「今なにをしているか」が吹き出しで出ます。頭の上の小さなマークも、仕事の種類(議事録、レポート、請求、調査)に応じて変わります。

キャラをクリックすると「今なにしてる」が吹き出しで出る
キャラをクリックすると「今なにしてる」が吹き出しで出る

ここまでは、よくある可視化です。難しいのはこの先でした。


② 忙しさと、成果は、別のもの

作ってみて最初に気づいたのは、「動いている」と「役に立っている」はまったく違うということです。

たとえばある自動処理は、1日に何度も走っていました。画面上ではいつも緑で、忙しそうに見えます。ところが中身を数えると、8割が「対象なし」で終わっていた。走ってはいるが、何も産んでいない。私はこれを「空振り」と呼んで、緑とは別の見た目にしました。

忙しく見えることと、成果が出ていることを、同じ色で描いてはいけない。忙しさは、うまくいっている証拠にはならないからです。


③ 見せるべきは、止まっていないか

いちばん大事なのは、ここでした。

可視化というと、つい「たくさん動いている」を見せたくなります。けれど本当に見たいのは逆で、動くはずのものが止まっていないかです。失敗に気づかない忙しさが、いちばん怖い。

そこでオフィスには、工場の「アンドン」と同じ考え方を入れました。失敗したまま・普段より止まっている・判断待ちで動けない ― これらを、成果とは違う見た目ではっきり出す。該当がなければ、何も出しません。常に鳴っている警告は、やがて見られなくなるからです。

異常があれば赤で知らせ、直れば黙る。何もなければ表示は出ない
異常があれば赤で知らせ、直れば黙る。何もなければ表示は出ない

この「直れば黙る」も、あとで自分の首を絞めました。一度出した赤を、直ったのに消していなかった。もう動いているのに、画面だけがずっと赤い。警告を出す仕組みは、鳴らすのと同じくらい、止めるのが難しい


④ AIが、人に投げたまま止まっているもの

もうひとつ入れたのが「宿題トレイ」です。AIは仕事の途中で、しばしば人の判断を待ちます。「これは公開してよいか」「この申請を承認してほしい」。その"投げたまま"が、どこにも溜まらずに消えていた

だから、AIが人に投げた判断待ちを一か所に集めました。古いものほど上に来ます。作ってみると、いちばん古いもので何十日も前のものが沈んでいた。止まっていたのはAIではなく、人の側だったわけです。

AIが人に投げたまま止まっている判断待ちを、一か所に溜める
AIが人に投げたまま止まっている判断待ちを、一か所に溜める

おまけ ― 一日を、早送りで

画面の下のバーで、その日を一分ほどで早送り再生できます。深夜の暗いフロアから、朝焼けへ。空の色も照明も、時刻に連動します。誰がいつ働いていたかが、そのまま光の移り変わりで分かる。ここが、いちばん見ていて楽しいところです。

深夜の暗いフロア。窓の外には街の灯りだけ
深夜の暗いフロア。窓の外には街の灯りだけ
早送りで朝へ。時刻が進むと空も照明も明るくなる
早送りで朝へ。時刻が進むと空も照明も明るくなる

見えるようにして、分かったこと

– 動いているAIは、案外「空振り」している。忙しさは成果の証明にならない

– 本当に見たいのは、たくさん動いている図ではなく、止まっていないか

– 警告は、出すより「直ったら黙る」ほうが難しい

– 止まっていたのは、AIより人の判断のほうだった

可視化は、褒めるためではなく、気づくためにあります。忙しそうな緑をたくさん並べても、失敗に気づけなければ意味がない。見えるようにするとは、都合の悪いものも同じ画面に出す、ということでした。

データも、人も、AIも、つながって、はじめて次が見えてきます。あなたの現場では、AIが「何をしているか」は見えていますか。そして、「止まっていないか」は。

ABOUT ME
石井 亮介(りょうさん)
石井 亮介(りょうさん)
データパレード 代表取締役
㈱データパレードの代表取締役で高田馬場の町中華のChief Data Officerをしています。 BIツールのセールスエンジニア・システムエンジニア・カスタマーサクセス歴15年、大学データサイエンス科 講師をしています。データエンジニア領域とコンサルティングが得意です。
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