AI社員が「働いて見える」オフィスを作った ― 可視化で見せるべきは、忙しさではなく「止まっていないか」
〜 ドット絵のオフィスで、AIメンバーたちが実際のログどおりに動く 〜
自社では、いくつもの業務をAIに任せています。議事録の整理、レポートの生成と公開、請求まわりの下ごしらえ、チャットの収集。毎日どこかで自動処理が動いています。けれど、ふと思いました。これだけ動いているのに、私はそれを一度も「見て」いない。
動いているかどうかは、ログを開けば分かります。でもログは、詰まっているときほど読みたくないものです。そこで、AIメンバーたちが働く様子を、そのまま一枚の画面にしました。ドット絵のオフィスに、AIの司令塔である副社長のアケミ(AI)と各部署が住んでいて、実際の作業ログどおりに歩き、机で作業し、疲れれば休憩室に下がります。

作り方の詳しい話や、この一枚をどこまでAIに任せて作ってもらったかは、体験談として別にまとめています。
なぜ、わざわざ「見えるように」するのか
ログは、正しく動いているときは読まれません。読むのは、たいてい何かが壊れたあとです。つまり普段は誰の目にも触れていない。それでいいのだろうか、と考えました。
人が大勢いる部屋なら、誰が忙しくて、誰が手を止めているかは、見れば分かります。AIにも同じ「見れば分かる」を持たせたい。それが出発点でした。
見た目はあえて2Dのドット絵にしています。立体にすると情報が増えて、かえって状態が読みにくくなる。16ピクセルの小さな人が、机にいるのか休憩室にいるのか、それだけが一目で分かればいいからです。
① まず、「何をしているか」を見せる
キャラをクリックすると、その部署が「今なにをしているか」が吹き出しで出ます。頭の上の小さなマークも、仕事の種類(議事録、レポート、請求、調査)に応じて変わります。

ここまでは、よくある可視化です。難しいのはこの先でした。
② 忙しさと、成果は、別のもの
作ってみて最初に気づいたのは、「動いている」と「役に立っている」はまったく違うということです。
たとえばある自動処理は、1日に何度も走っていました。画面上ではいつも緑で、忙しそうに見えます。ところが中身を数えると、8割が「対象なし」で終わっていた。走ってはいるが、何も産んでいない。私はこれを「空振り」と呼んで、緑とは別の見た目にしました。
忙しく見えることと、成果が出ていることを、同じ色で描いてはいけない。忙しさは、うまくいっている証拠にはならないからです。
③ 見せるべきは、止まっていないか
いちばん大事なのは、ここでした。
可視化というと、つい「たくさん動いている」を見せたくなります。けれど本当に見たいのは逆で、動くはずのものが止まっていないかです。失敗に気づかない忙しさが、いちばん怖い。
そこでオフィスには、工場の「アンドン」と同じ考え方を入れました。失敗したまま・普段より止まっている・判断待ちで動けない ― これらを、成果とは違う見た目ではっきり出す。該当がなければ、何も出しません。常に鳴っている警告は、やがて見られなくなるからです。

この「直れば黙る」も、あとで自分の首を絞めました。一度出した赤を、直ったのに消していなかった。もう動いているのに、画面だけがずっと赤い。警告を出す仕組みは、鳴らすのと同じくらい、止めるのが難しい。
④ AIが、人に投げたまま止まっているもの
もうひとつ入れたのが「宿題トレイ」です。AIは仕事の途中で、しばしば人の判断を待ちます。「これは公開してよいか」「この申請を承認してほしい」。その"投げたまま"が、どこにも溜まらずに消えていた。
だから、AIが人に投げた判断待ちを一か所に集めました。古いものほど上に来ます。作ってみると、いちばん古いもので何十日も前のものが沈んでいた。止まっていたのはAIではなく、人の側だったわけです。

おまけ ― 一日を、早送りで
画面の下のバーで、その日を一分ほどで早送り再生できます。深夜の暗いフロアから、朝焼けへ。空の色も照明も、時刻に連動します。誰がいつ働いていたかが、そのまま光の移り変わりで分かる。ここが、いちばん見ていて楽しいところです。


見えるようにして、分かったこと
– 動いているAIは、案外「空振り」している。忙しさは成果の証明にならない
– 本当に見たいのは、たくさん動いている図ではなく、止まっていないか
– 警告は、出すより「直ったら黙る」ほうが難しい
– 止まっていたのは、AIより人の判断のほうだった
可視化は、褒めるためではなく、気づくためにあります。忙しそうな緑をたくさん並べても、失敗に気づけなければ意味がない。見えるようにするとは、都合の悪いものも同じ画面に出す、ということでした。
データも、人も、AIも、つながって、はじめて次が見えてきます。あなたの現場では、AIが「何をしているか」は見えていますか。そして、「止まっていないか」は。

