自社の業務アプリ DataParade Core
— iPhone1台で会社が回るまで
会計・商談・案件・やりとり・議事録・名刺・書類、そして働き方と体調まで。社長の業務をiPhoneとiPadの1つのアプリに集めました。入力欄を作らず、記録はAIが毎晩書き換えます。2026年8月14日に着手を決め、4週間でTestFlightの版は234を数えました(2026年9月時点)。使いながら毎日直す、AI伴走型の開発です。
何をするためのアプリか
会社で起きていることを、人が入力せずに1つの台帳に集め、社長が判断だけをするための道具です。
会計、商談、案件、やりとり、議事録、名刺、書類、自分の働き方と体調。これらは別々の道具の中にあり、思い出す・探す・更新する・確かめるに、判断の前の時間が使われていました。パソコンの前にいる時間より、いない時間の方が長い会社です。移動中でも、電話の途中でも、判断に要るものが手元に揃っていること。それがこのアプリの目的です。
考えたこと(要求)
- 入力しなくても、台帳が最新である。入力する人がいない台帳は古くなる。材料は社内にすでにあるので、集めて書き直すのは機械の仕事にする。
- 正本は1つ。向きは一方通行。置き場が2つあると、いつか片方が片方を巻き戻す。
- 開いた瞬間に「今、最初にやること」が分かる。朝いちばんに何をするかを、自分で決めない。
- 判断が要るときだけ鳴る。報告・連絡・相談を通知の強さで分け、判断に使う頭を通知を読むことに使わない。AIがやったことは、あとで読める程度に残す。
- 数字より先に「信じてよいか」。材料が欠けた数字を、正しい数字と同じ顔で出さない。
- 経営の数字は、会計の数字と別に持つ。税込経理の会計から、税抜の着地を出す。着地は「請求書を出せば売上」で決める。
- 探す時間をなくす。フォルダ、チャットの部屋、メールの検索を、順に開かない。
- 押したものは戻せる。戻せない操作は、押す前に迷わせ、使われなくなる。
- 自分の働き方と体を、同じ時間軸で見る。働いた時間もAIに任せた量も、感覚で語らない。
- AIも、人と同じ入口を通る。AIへの依頼を案件に結び、変更には理由を残す。
- 使いながら毎日直す。要件を固めて納品する型ではなく、気づいた日のうちに直して翌朝には手元に届く。
機能にしたこと(要件)

機能は、要求を満たすための手段です。要求が変われば機能は入れ替わります。変わらないのは、判断だけを人がする、という目的です。
起点 — 台帳ツールの限界
始まりは販売管理システムの解約でした。AIから読み書きできない道具は、業務の外側に取り残されます。代わりに台帳ツールへ案件と見込みを足し、毎朝AIが集計する経営ダッシュボードを作りました(会計と販売管理は、普通は同じ画面に載らない)。
台帳はそのまま「入力しない台帳」に育ちました。打ち合わせの記録、チャット、メール、相手の会社の動きが毎晩集まり、AIが案件ページを書き直します(業務をシステムに合わせるのを、やめました)。
それでも、残る不満が3つありました。画面の行き来が多い。iPhoneやiPadで見づらい。台帳・ローカルのファイル・自前のダッシュボードと、置き場が3つに分かれている。
そこで決めたのが「iPhoneとiPadさえあれば業務が回る」です。移動が多く、パソコンの前にいない時間のほうが長い。その時間に、事務も営業も開発の指示も済ませたい。2026年8月14日、自社のAWSの上に、自分の会社のためだけのアプリを作ると決めました。つないだ情報源は14です。

決めごと6つ
入力欄を作らない。
案件名も金額も進み具合も、人が打つ場所を最初から用意しない。材料は社内にすでにある。
記録を書き換えるのはAI。
人が触るのはコメント欄だけ。書いた一言が翌朝の記録に反映される。
正本は1つ。
台帳ツールへの書き戻しも、そこからの取り込みもやめた。向きが2つあると、いつか片方が片方を巻き戻す。
同じ名前の数字は1か所で計算する。
アプリと盤で同じ数字を出すなら、正本のビューを両方に渡し、ずれたら先に知らせる。
数字より先に「信じていいか」。
どの取り込みが止まっているかを、金額より上に出す。
判断が要るときだけ鳴らす。
1日に来るやりとりと判断は多い。人の判断が要るところだけ通知を鳴らし、AIが自動でやったことは、あとで読める程度に残す。報告・連絡・相談を、通知の強さで分ける。


できたもの
ホーム(今、最初にやること)、カレンダー、通知、やること、承認待ち、案件、取引先、人と名刺、書類、やりとり、議事録、経営管理、AIワークライフ、そしてiPhoneとiPadのウィジェット。画面は38、テーブルは166、ビューは92です。





* 画面写真はすべてデモモードのダミーです。
どう作ったか
要件を固めて納品する型ではなく、使いながら毎日直しました。社長が実機で気づいたことをその日のうちに直し、TestFlightで翌朝には手元に届く。直したら学びを1つ記録し、できるかぎり自動チェックに変えます。同じ失敗を人が覚えておく必要がなくなります。
検査は3本立てです。コードの書き方をすべて検査する静的チェックが138本(2026年9月時点、以下同じ)。本番のAPIを叩くE2Eテストが291項目。台帳が守るべき決まり(不変条件)が30本。毎晩3時30分に全部を流し、落ちたら朝いちばんの通知に出ます。学びの記録は128件になりました。
検査は「落ちるはずの状態を先に作って当てる」ことを決まりにしています。直す前に落ちない検査は、直したあとも何も守りません。

何が手元から消えたか
打ち合わせの前に思い出す時間。確かめに行く時間。台帳を更新する時間。そして「パソコンの前にいないと済まない」という制約。数字の裏取りに人が走る場面は、止まっているものを機械が知らせる形に置き換わりました。
